ある日、近くのお宅にお経を挙げに行くため歩いていると近所のお爺さんが、帽子を取り深々とお辞儀をして「こんにちは」と言って下さったのです。私が丁寧に挨拶を返すとお爺さんは、「行ってお帰り」といって下さいました。私も「行って帰ります」と言いました。
そういえば、久しぶりに聞いた挨拶でした。子供の頃、家から学校へ出掛ける時「行って帰ります」と言うと、家族が「行ってお帰り」と言ってくれていたことを思い出しました。
「行って帰ります」という言葉には、「無事に帰って来ます」という思いが込められ送り出してくれる人を安心させる事が出来ます。一方送り出す側の「行ってお帰り」には無事に帰ってくるようにという見送られる人への願いが込められています。
都会での一人暮らしでは「行って帰ります」という声を掛ける相手もおらず、送り出し迎えてくれる人もいません。家族が居て地域の人に温かな挨拶が出来る環境は素晴らしいことです。そんな環境にいると人は自分の居場所があることを実感し安心感が生まれます。誰かを心配し気に掛けること。大切な人を悲しませないようにする事。これらの事は挨拶から始まっていたのですね。
私は、お爺さんのお陰で人と人が繋がる素晴らしい言葉を思い出しました。
「行ってお帰り」「行って帰ります」何だかホッとするご挨拶です。
少林寺20世 清涼 晃輝(せいりょう こうき)
1979(昭和54)年生まれ
豊川稲荷(妙厳寺)
愛知学院大学卒業
㈱坪井屋佛檀店
大本山永平寺
動物供養総本山 長楽寺動物霊園などで修行
平成21年 少林寺、蓮光寺(奈義町)住職就任
曹洞宗 圓通閣 澤龍山 少林寺
(美作西國三十三観音十一番札所)
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